加計学園・獣医学部問題 前川喜平氏が思いを語る 愛媛県今治市
【市財政、将来が不安/官邸訪問の説明を】
学校法人加計学園(岡山市)の愛媛県今治市での岡山理科大獣医学部新設について3日、市内で講演した文部科学省の前川喜平前事務次官(63)。終了後に愛媛新聞の取材に応じ、加計問題への思いを語った。
<2017年11月の学部設置認可への感想は。>
国家戦略特区で無理に例外をつくり、文科行政に汚点を残した。実習実験装置や動物など獣医師養成には特に費用がかかり計画性が必要。既存の16獣医系学部・学科の入学定員930人に対し今回の140人追加は需給バランスを崩す。
<講演会前に獣医学部建設地を視察した。>
加計ありきの既成事実の積み重ねの結果であり、国民、県民、市民の在り方が問われる。学部施設は権力の私物化の象徴だ。
<政治家の文科省への大学設置の働き掛けはあるか。>
ままあるが筋を曲げて便宜は図らない。獣医学部はつくらないことになっているのに(首相官邸が)つくれと言った。同特区で新設された千葉県成田市の国際医療福祉大医学部も規制緩和の名分で特権を与え、加計問題と似ている。注目されないのが不思議だが医師会は納得し、厚生労働省も人材需要を示した。それが今回は獣医師需要を明らかにすべき農林水産省が逃げ回った。
<国際競争力強化のため獣医学部を増やす必要性は。>
北海道大と帯広畜産大の連携など国際水準の学部をつくる努力はされている。国内の研究者は少なく学部増加は人材分散につながる。文科省は量より質重視で統合も視野に共同獣医学科設置などを進めてきた。
<文科省の先輩の加戸守行前知事の発言や自治体の大学誘致をどう捉えるか。>
まっとうな行政がゆがめられたとの考えは変わらない。高等教育を担当した約30年前は地元大学進学率が注目され、大学誘致がブームだった。愛媛県と今治市も用意した土地をどうにかしたかったと思うが、学部新設への支援額が大きく将来の市財政を不安視せざるを得ない。