愛媛県松山市溝辺町のマンション「中道後ハイツ」の住民が、マンションの集会室で「趣味の作品展示会」を開いている。入居者の付き合いが希薄になりがちな集合住宅ゆえの事情に加え、築42年となって独居や認知症を患う住民が増えた。日頃から交流を深め、災害時などに互いに助け合える関係を育もうと、初めて開催した。
 「何とか住民同士が絆を深める機会をつくれないか」。作品展を中心になって企画した住人の男性(76)は思いを語る。
 1974年の完成当初は20人以上の子どもがおり、親同士の交流もあった。やがて子どもが独立し、入居者の入れ替わりもあって付き合いが薄れた。
 小倉さんは「隣人の名前や顔も知らず、すれ違っても言葉を交わさない人もいる」現状に頭を悩ませてきた。
 1人暮らしや、認知症など健康面に不安を抱える住民も増えた。気がつくと、59戸約110人の入居者の約4割を65歳以上が占めていた。
 「作品展を開けば、居住者をつなげられる」。マンションで囲碁や俳句をしているグループにも呼び掛け、住民全員に参加を促した。
 21日に始まった作品展では、幼稚園児から94歳の住民ら22人が作品を出展した。玄関脇の14畳の集会室が、色鮮やかな花や果物の水彩画、書道や俳句など計170点で埋まった。会場には住民が集い、作品を眺めながら談笑を楽しんでいる。
 羽織を洋服にアレンジした女性(57)は「顔は知っていても話したことがない人もいる。『こんな趣味があるんだ』と知り、話しかけやすくなった。これをきっかけに仲良くなれたら」と話す。
 住民らは「自助共助のきっかけにしたい」と、今後も定期開催を検討している。
 展示会は29日まで。午前10時~午後6時。