新聞配達で地域とつながる野村高生 16日新聞配達の日・新聞少年の日
「高校生が地域とつながる数少ない仕事なんでしょうね」。寝静まる愛媛県西予市野村地域中心部の一角に明かりがともる。一足早い朝を迎えている愛媛新聞エリアサービス野村(同市野村町野村)の鈴木紀美子所長(56)が、目を細めつつ話した。16日は「新聞配達の日・新聞少年の日」。同エリアサービスは長年、地元の高校生らをアルバイトとして受け入れてきた。
朝日が顔を出すには早すぎる12日午前4時。野村高3年の女子生徒(18)は、配達する約70部を既に数え終えていた。自転車に乗ると迷うことなく配達ルートを進み、郵便受けに朝刊をそっと入れていく。深まる秋の肌寒さもなんのその。坂道では体重をかけてペダルを踏み込み、狭い路地では自転車を置いて早歩きする。
高校1年の終わりに野村高の先輩から仕事を引き継いだ。「『新聞を楽しみにしているよ』と言われるのがうれしい」とやりがいを感じている。卒業後は松山市で働く予定。「新聞配達を通してコミュニケーション力が付いた。アルバイト代をもらい、金銭感覚も養えたと思う」と自信を深めているようだった。
同日午前5時半すぎ。山あいの集落では、クラスメートの男子生徒(18)が配達準備に取りかかった。担当するのは自宅周辺の20部ほどだが、家と家が離れていたり、厳しい坂道があったりして楽ではない。それでも「(所属する)サッカー部の朝練感覚です」と笑顔。県外の大学進学を目指しており、「地域の人は昔から知っている。朝会えばあいさつもするので、卒業すれば寂しくなる」と話した。
鈴木所長によると現在、2人を含め野村高の9人が新聞を配っている。これまでに延べ約150人が社会に巣立った。アルバイト代を家計の足しや部活費用に充てる学生もいるという。
「本当によく頑張ってくれている。仕事が嫌になって辞める人はほとんどいない」と感謝。「生徒さんの第二の母になったつもりで、これからも受け入れを続けたい」と柔らかな表情で語った。