四国電力伊方原発(愛媛県伊方町)での重大事故を想定して県が11日に実施した原子力防災訓練では、原発が立地する伊方町や半径30キロ圏の大洲、西予両市の住民らが参加して陸海空路を使った避難が検証された。一方で、30キロ圏外は国が避難計画策定を義務付けていないが、東京電力福島第1原発事故で避難を余儀なくされた自治体もあり、隣接する高知県では独自の計画を策定するなど、自治体によって対応に差が出ている。
 伊方原発3号機の再稼働直前の8月上旬、高知県は一部地域が原発から50キロ圏にかかる檮原町や四万十市からの避難ルートを盛り込んだ「県原子力災害避難等実施計画」を策定した。計画ではそれぞれ4ルートの避難経路を示し、具体的な避難先は明示していないものの、県内の避難所候補をリストアップ。県危機管理・防災課は「福島事故を踏まえ、万が一を想定した」と経緯を説明する。
 檮原町は6月までに避難計画を策定。9月に初めての訓練も実施し、50キロ圏に入る四万川地区の住民が自家用車などで町内の体育館に避難した。参加した農業安井繁徳さん(85)は「被害を受ける可能性がある以上、練習を重ねる必要がある」と語る。町総務課も「福島事故で町民の不安は高まっており、安心感につながる」と避難計画や訓練の有用性を強調する。
 県内でも一部地域が30キロ圏、大半が50キロ圏に入る内子町が福島事故の実態を踏まえて50キロ圏を対象とした住民避難計画を独自に検討している。現状について町総務課は「避難住民の受け入れ先を決めるマッチングなどが難しい」と明かす。「町としての対応には限界があり、国などの積極的な関与を求めたい」とするが見通しは立っていない。