内子出身・中田さん(東京)手縫い63年輝く背広 現代の名工
手縫い一筋63年―。東京都西東京市で紳士服店「テーラー中田」を営む愛媛県内子町出身の中田雅頼さん(78)=埼玉県新座市=が、2016年度「現代の名工(卓越した技能者)」に選ばれた。裁断や縫製、アイロン操作など熟練の技術を駆使して「着やすく時代に合った」オーダーメードの一着を仕立て、顧客のこだわりに応え続けてきた。
旧田渡中学校(現小田中)に在学中、興行師の父松雄さん(享年67)を亡くし、進学を断念。松山市永代町にあった池田洋服店に就職し、8年間の修業で裁縫の腕を磨いた。専門書で独学していた裁断技術を本格的に学ぼうと、東京の兄弟子を頼り上京。浅草の洋服店勤めを経て独立し、顧客の注文を受けた店から自前の職人ではまかないきれない分の仕事を請け負う「下職」となった。
妻清子さん(77)との婚約を機に、会社や家を訪問して注文を取る外交販売に切り替えた。親方のかばん持ちとして外回りに同行していた松山での経験から、東京の顧客にも臆せず接することができた。池田洋服店のおかみさんも筆まめで、息子の友人や同郷の知人を顧客として次々と紹介してくれた。親代わりとなって一人前の職人にしてもらい、独立後も親身に世話を焼いてくれた親方夫妻の恩は片時も忘れていない。