がいな塩パン、東京・墨田区に出店 脱サラの息子 父の味継承
全国的な「塩パン」ブームの火付け役となった愛媛県八幡浜市の人気パン店「パン・メゾン」。その姉妹店「塩パン屋 パン・メゾン」が15日、東京都墨田区にオープンした。初日から手作り・焼きたてを求める客でにぎわっており、東京でも愛媛発祥の「元祖塩パン」が人気を集めそうだ。
パン・メゾンによると、2号店の松前店では週末に塩パンが1日5千個以上売れており、「日本一売れている塩パン」などと呼ばれている。
八幡浜店(本店)の店主平田巳登志さん(62)の息子で、大手携帯電話会社の東京本社で働いていた克武さん(35)が東京の姉妹店の店長を務める。克武さんはパン・メゾンの塩パンが有名になるにつれ、会社の同僚から「食べたい」「持ってきて」とせがまれるようになった。だが焼きたてを味わってほしいとの思いから断っていた。
「愛媛でこれだけ売れるなら、東京ならもっとすごいことになるのでは」と感じていたものの、自ら担い手になる気はなかった。
そんな中、2017年に巳登志さんが「塩パン生みの親」として民放バラエティー番組に出演。克武さんは塩パンを作り上げた父の苦労に心を動かされた。「もっと多くの人に食べてほしい」。6年勤めた会社を退職し、パン職人の世界に足を踏み入れた。
東京での出店を目指し、17年7月から父の下でパン作りを修業した。確かな技術を身に付けるには通常5~10年かかるとされるが、パンの種類を絞ることで短期間で自分のものにした。
国内外から大勢の観光客が訪れる浅草近くで店舗物件を探していたところ、10月末、幹線道路の浅草通りに面した掘り出し物が見つかり、契約。製造スタッフを9人雇い、開店に向けた準備を本格化した。
本店や松前店は100種類以上のパンを置いているが、店舗の広さが23坪と限られている東京では「限りなくシンプルな品ぞろえに」と塩パン(100円)や塩メロンパン(150円)など4種類に絞った。安定的に1日4千個を売るのが当面の目標だ。
迎えたオープン初日。新規開店の宣伝は店頭での張り紙程度だったが、午前9時の開店前から約30人の行列ができていた。夕方になっても列は途切れず、焼き上がるたびに塩パンが売れていった。パン作りに追われる克武さんは「最終的には『世界の塩パン』を目指す」と高い目標を見据えている。