愛媛県今治市神宮の野間神社にある国重要文化財(重文)の鎌倉時代末期の宝篋印塔(ほうきょういんとう)が、地盤の劣化で地震や集中豪雨による倒壊の危機に直面し、神社が行政などの支援を得て修理を進めている。関係者らは「約700年守られてきた塔は地域の誇り。末永く後世に伝えねば」と10月末の完成を待ち望んでいる。
 宝篋印塔は追善供養や願主の功徳のために経を納めた塔。同神社がある野間地区には、鎌倉時代後期から南北朝時代にかけての五輪塔などを含む重文の石塔16基が集中する。
 同神社の宝篋印塔は花こう岩製で高さ約2.8メートル。1322(元亨2)年に紀有春と妻が除病延命を願って造ったとの銘文を刻む。上部の相輪は後補で、芸予諸島や今治平野の塔に見られる「越智式」と呼ばれる意匠。神社下の池から引き揚げられ、隣の寺を経て1935年に本殿裏に移設されたといい、54年に重文となった。
 修理は、地盤の土砂が長年の雨で流されて傾いていたため、2月の神社総代会で実施を決定。国や県、市の補助で5月に始まり、基礎を強化して組み直す作業が続いている。