漫画家松本零士さん(78)=東京都=が愛媛県大洲市新谷での疎開時代に遊んだ瑞安寺近くに記念碑が建立され、14日に除幕式があった。碑には柿を頰張る2人の少年の絵。松本さんが親友との「永遠の思い出」を描いたものだ。
 「おい松本 10年たっても オラを忘れるなよ」
 「だれが 忘れるもんか 卓ちゃん」
 少年は松本さんと同級生で、2003年に65歳で亡くなった野崎卓助さん。描かれているのは、戦時中の1944(昭和19)年、6、7歳だった2人が柿の木の上で交わした実際の会話だ。「子どもにとって、はるか未来を表す言葉だから『10年たっても』の表現になったのだろう」と松本さん。
 終戦後、2人は離れ離れとなり松本さんは漫画家、野崎さんは獣医師になった。だが「忘れるもんか」の言葉通り、終生の友となった。頻繁に連絡を取り合う関係が続き、松本さんは「何かあったら助けてくれる頼もしい人だった」。新谷での疎開生活を描いた自伝的漫画「昆虫国漂流記」にも野崎さんを「タクスケ」の名で登場させている。
 碑は柿の木があった場所に建てられ、しかもすぐそばが野崎さんの墓所。14日の除幕式で松本さんは「ここは本当に私のふるさとです」とあいさつし、墓地を走り回って注意されたり神南山を眺めたりした記憶を懐かしんでいた。
 碑を建てたのは、野崎さんの弟で瑞安寺住職の野嵜全昭さん(77)。「兄も、よう来たって喜んでいるんじゃないか」と、松本さんとの再会を喜んでいた。
 松本さんは両親が大洲市出身。市内各所では15日、松本さんを迎えた催しが始まり、新谷町では食事会が開かれた。16日午後1時からは、松本さんがリジェール大洲(東大洲)で講演する。