最後の菊園ファンに感謝 新居浜の篠原さん 600鉢庭で見頃
長い間、ありがとうございました―。毎年愛媛県内外のファンを楽しませてきた菊園に置かれた女の子の人形の手には、感謝を記した垂れ幕があった。新居浜市萩生の無職篠原弘さん(80)が自宅の庭で丹精した約600鉢の菊の花が今年も見頃を迎えているが「お披露目する菊園は最後にしようと思う」と、高齢を理由に一区切りを決断した。
色とりどりの菊は約170平方メートルの裏庭から通路の両脇までびっしり並ぶ。直径約20センチの大輪「大菊」や小枝に多くの花をつける「スプレー菊」など種類は300以上。数字の形にしたり、キャラクター人形と共演させたりして「毎年新しいことに挑戦し、自信をもって人に見てもらってきた」と胸を張る。
コンテナを積み上げるひな段や雨風をしのぐ屋根は毎年全て手作りする。妻国枝さん(77)と協力する水やりも毎日1時間ほどかかる。今年は準備に例年の倍の20日ほどかかり「体力の限界。年じゃな」とぽつり。
菊との出合いは1993年、職場仲間から5本を譲り受けたことだった。徐々に数を増やし、さまざまな栽培方法を試し、見せ方も工夫した。「気が付いたら夢中になっていた」(弘さん)。これまでで一番の自信作は「懸崖(けんがい)菊」だ。鉢に竹枠を付けて茎を沿わせ、小菊の花が45度以上の角度で垂れ下がる。庭では2段に並べ、ひときわ存在感をみせる。
見頃の時季には1日約50人が訪れ、南予や県外にもファンがいる。20年以上続く菊との関わりが「人とのつながりをたくさん感じさせてくれた」と目尻を下げる。「楽しみにしてくれていた人に、お礼を伝えたい。辞めたら寂しくなるなあ」とつぶやき、咲きかけの花にそっと触れた。
篠原さんによると、今年は例年より1週間ほど遅く咲き始めたため、12月上旬までは楽しめそう。入場無料だが、10人以上の団体は予約が必要。問い合わせは篠原さん=電話0897(41)7859。