お母さん、入選しとったよ―。東京の国立新美術館で8月31日~9月12日に開かれた「第101回二科展」に愛媛県今治市小泉2丁目、村上泰子さん(80)のデザイン作品が初入選した。7月末に亡くなった母を在宅介護しながら手にした「三度目の正直」で「うれしいよりも、ほっとした気持ち」と胸をなで下ろしている。
 書道や文学好きな村上さんが創作を始めたのは約5年前。素材を貼り合わせて造形するコラージュに興味を抱き、不慣れなインターネットを使って美術通信講座に出合った。
 約2年の講座終了後も講師とやりとりし、介護の合間を縫って創作を継続。紙製のボード(縦23センチ、横16センチ)6枚にアクリル絵の具などで色を重ねたり消したりする作業を春ごろから約3カ月間繰り返し、色が繊細な風のように吹き交う情景を表現した組み作品「色のさざめき」を完成させた。
 母の宇佐美トキエさんは約12年間の介護の末、入選通知が届く約1週間前に老衰のため103歳で亡くなった。村上さんは制作追い込み時期の介護は大変だったというものの「絵と向き合うことで気持ちが切り替えられた。残りの人生何ができるのか自問自答する中で結果が出せた」と達成感を語る。
 今後の目標は「元気だったら次の二科展にも挑戦したいけど…」と定まっていないが「素材に金属を使ったらどうなるのかな?」と頬に手を当て真っ白なボードを見つめていた。