第14回松山城薪能(実行委員会主催)が2日夜、愛媛県松山市堀之内の城山公園であり、赤く燃える炎に照らされた伝統の舞が約500人を別世界へいざなった。
 かがり火が揺らめく屋外舞台で、愛媛能楽協会の約20人が観世流仕舞「松風」や大蔵流狂言「雁礫(がんつぶて)」など5演目を披露した。「雁礫」は通行人が小石で仕留めた雁を、先に狙っていたのだと横取りしようとする大名を風刺。雁を元の場所に置き直し、大名が弓を放ったが矢がぽとりと落ち、悔しがるしぐさが客席の笑いを誘った。
 最後を飾る観世流能「通小町(かよいこまち)」では笑いから一転、死後も小野小町の霊に思いを寄せ、成仏を妨げる少将の鬼気迫る執心の舞に、観客は食い入るように見入った。