北越紀州製紙(東京)は16日、大王製紙(愛媛県四国中央市)が転換社債型新株予約権付社債の発行を公表後に株価が大幅に下落し株主の利益が損なわれたとして、大王の佐光正義社長ら取締役13人を相手に約88億円の損害賠償を求める訴えを東京地裁に起こしたと発表した。
 提訴は15日付。北越紀州は大王株の約2割を保有する筆頭株主。大王に派遣している社外取締役1人は対象に含んでいない。
 北越紀州は、発行の撤回を再三求めたが、大王は応じず発行したと主張。株主から経営を負託されている取締役としての責任と義務を果たしていないと批判している。
 大王は9月1日、成長分野のおむつや段ボール事業の生産設備増強に充てるなどとして、額面総額300億円の転換社債の発行を発表。同17日に予定通り実施した。
 北越紀州によると、大王株は発表直前の9月1日の終値から、7日には下落率が27・2%に達した。賠償額は、第三者機関が転換社債発行に起因する損害を約88億~約126億円と試算したのに基づき、「最も保守的に見積もった金額」を請求根拠にしたという。
 大王製紙は16日、コメントを出し「社債発行は目的、条件とも合理的で十分議論を尽くした。取締役に任務懈怠(けたい)はない」と正当性を主張。発行に際しては、転換社債の公正価値の評価や手続きについて専門家から報告や意見を受けたと説明、弁護士らと今後の対応を検討したいとしている。