「奇跡のバックホーム」を生んだ1996年夏の甲子園(第78回全国高校野球選手権大会)決勝の松山商(愛媛)―熊本工戦から20年。当時の両校ナインらが22日、熊本地震の被災地支援のため熊本市内の球場に集った。予定していた再試合は雨の影響で中止となったが、希代の名勝負を繰り広げた元球児たちが笑顔で言葉を交わし、2016年中の試合開催を誓った。
 再試合は、サヨナラ負けを阻止した「奇跡のバックホーム」を投げた元松山商の会社員矢野勝嗣さん(38)=松山市=と、本塁でタッチアウトになった元熊本工のバー経営星子崇さん(38)=熊本市=が中心となって準備。地震で大きく損壊した熊本城すぐそばにある藤崎台県営野球場(同市中央区宮内)に、松山商監督だった沢田勝彦さん(59)=現北条監督=を含む両校OB計約35人が顔をそろえた。
 あいにくの雨にもかかわらず集まった市民ら約300人を前に、試合に代わってトークショーを開催。勝敗を分ける1球を投げた矢野さんは「熊本の地を踏めないと思っていた」とユーモアを交え、「(熊本地震で)皆さんが苦労している中、僕たちみんなが行かないといけないと感じた」と熱く語った。星子さんは「(自分が)アウトになったおかげで20年たっても名勝負と言われ、『奇跡のバックホーム』を語り継げる。ほんとに両校メンバーは幸せだ」と笑顔を見せた。
 関東や中国地方など各地から集まったOBたちは「プレーを見せたかった」と惜しみ、沢田監督が呼び掛けた年内の再試合を約束。最後は両校の校歌を歌い上げ、一人一人握手を交わした。