イノシシの食害に悩む愛媛県今治市玉川地区のコメ農家らが漢方薬の原料の多年草「ミシマサイコ」の栽培に挑んでいる。コメより作業の負担が軽く、動物も食べないことから収益安定につなげる考えだ。
 市によると、ミシマサイコはセリ科で根を漢方薬に使用。解熱、強壮作用があり、収穫まで約1年と薬草としては短く、連作ができる。収益はコメと同程度が見込めるという。
 栽培は鳥獣害対策の一環で県と市が推奨。同地区では約1年先行する2人を含む4人が今年6月に「玉川薬草組合」を設立し、市は9月定例議会に洗浄や収穫用の機械購入費などを提案している。
 退職後の2013年ごろ就農した丹下秋男組合長(64)は今年から挑戦。農薬を残さないよう雑草は手で引き、草が伸びる梅雨時季は大変だが「特別な技術はいらず、耕作放棄地解消につながる。玉川といえば薬草だと言われるよう頑張りたい」と意欲を見せる。
 先発組の越智要さん(66)は約5アールの畑で栽培し、今年は順調な生育ぶりといい「苦味があるためか、コメに比べイノシシ被害はほとんどない」と笑顔。市農林振興課は、組合は漢方薬問屋と契約予定とし「2年後に組合の総栽培面積が現在の33アールから1ヘクタールまで拡大し、組合員も増えれば」と期待している。