だんじりに男女なし 運行指揮に初の女性 西条まつり
愛媛県の西条まつりで最多の屋台数を誇る伊曽乃神社(西条市中野)の祭礼。神戸地区の「船形屋台」では、だんじりの運行を指揮する青年団の役員に今年初めて女性が就いた。会計役の団体職員戸田聖子さん(32)=同市中野=で、15、16日の本番を前に「役割をちゃんとこなしながら、安全に楽しく歩ききりたい」と意気込んでいる。
住民などによると、西条まつりは男性が屋台を運行、女性は炊き出しなどの裏方といったイメージが強く、女性が青年団の役職に就くことは珍しいとされる。ただ、近年は少子高齢化の影響などでかき手らの人手が足りず「女性が戦力として表に立つ時代が来つつある」という声も少なくない。
船形屋台の地元自治会は現在約50世帯。40年前と比べて1割ほど減り、独居高齢者が増えた。今ではかき手の半数近くが自治会外の男性で、かつては結婚するまでとも言われた青年団には50代もいる。青年団長で戸田さんの弟の祐規さん(30)は「自治会の人間だけでは運行は無理。事前の準備も個人の負担が大きくなった」と言う。
そこで白羽の矢が立ったのが、自他共に認める祭り好きで買い出しの手配など運行を手伝ってきた戸田さん。総代の高木弘太郎さん(62)も「自治会の女性や子どもをまとめるなど、誰もが頑張りを認めている」と評価し、昨年の祭りの後、会計役に推す話が持ち上がった。
とはいえ、「男女平等と言われる時代だが、祭りだけは別」と考えていた戸田さん。「地元に迷惑をかけてもいけない」と悩んだが、屋台のベテラン関係者に「祭りに男女は関係ない」と背中を押され、今年9月に会計役を引き継いだ。
祭りを間近に控え、戸田さんは物品の購入や領収証のチェックなど慌ただしく過ごす。9日夜の行事では、縁がないと思っていた青年団役員の腕章を巻いて屋台とともに地元を練り歩いた。「責任のある役職。気を引き締めてやるべきことをやりたい」と力を込めた。