人間国宝・嶋大夫さん引退決断 松山出身・文楽太夫
愛媛県松山市出身の人形浄瑠璃文楽太夫で、人間国宝の豊竹嶋大夫さん(83)=本名・村上五郎、東京都新宿区=は21日、来年1月と2月の公演を最後に引退すると発表した。「80歳を過ぎたころから何となく(引退を)考えていた。いろんな状況がある中で体力的な面もあって決断した」と理由を説明した。
大阪市中央区の国立文楽劇場で記者会見した嶋大夫さんは、これまでの太夫人生を「つらい思い出ばかり。つらいけど浄瑠璃が大好き。頭から離れたことはない」と振り返った。
引退を決めた時には「真っ先に弟子たちの顔が浮かんだ」と明かし、舞台を離れても後進の指導に引き続き取り組むと強調。大勢のファンに対しては「皆さんが心配してくれて本当にありがたい。健康面の問題はない」と笑顔で話し、長年の支援に対する感謝を示した。
引退公演は2016年1月3~26日に国立文楽劇場、2月6~22日に国立劇場(東京都千代田区)で開催。演目などは調整中。嶋大夫さんの引退で、現役文楽太夫の人間国宝は不在となる。
嶋大夫さんは繊細さと力強さを持ち合わせた情感あふれる語りで高い評価を得るとともに、後進育成にも力を注ぎ国立劇場文楽賞文楽大賞(2002年)や旭日小綬章(08年)、愛媛新聞賞(13年)などを受けた。