愛媛県松山市道後湯之町の大和屋本店「道後能楽堂 千寿殿」が建立20周年を迎えるのを記念し、「第31回松山喜多流能」が7月10日午後4時から、同能楽堂で開かれる。今回は、スケールの大きさから演じられる機会が少ない「安宅(あたか)」を上演する。シテ(主役、武蔵坊弁慶)は松山市出身で喜多流職分の金子敬一郎。このほど帰郷し、「地方ではなかなか見られない作品。これを機会に、能楽の世界に足を踏み入れてほしい」と呼び掛けた。
 「安宅」は、歌舞伎十八番の一つ「勧進帳」の原曲。山伏姿に身を変えて奥州に落ちのびる源義経を守るため、武蔵坊弁慶が機転を利かせ、安宅の関を切り抜けるという大曲だ。能面をつけない「直面(ひためん)もの」の代表作ともされている。
 愛媛の能楽振興の拠点にもなっている野外舞台・千寿殿の魅力について、金子は「能楽はそもそも野外でされていたもの。夏の暑さや冬の寒さといった季節感があるのは大変素晴らしい」と語った。
 入場料は1万円。問い合わせは大和屋本店=電話089(935)8880。