愛媛県西条市丹原町古田の西山興隆寺は30日、本尊の千手千眼観世音菩薩(ぼさつ)を55年ぶりに開帳した。県内外から大勢の参拝客が訪れ、慈愛に満ちた姿を目に焼き付けながら静かに手を合わせた。開帳は11月6日まで。
 寺によると、本尊は高さ約2メートルの寄せ木造りの立像で平安期の作。厨子(ずし)の左右には二十八部衆と呼ばれる眷属(けんぞく)の像28体が並ぶ。開帳は1961年以来で、2013年から1年余りかけて修復した本尊を信徒らに披露しようと企画した。
 開帳初日は、地元園児ら25人が稚児行列を披露。国指定重要文化財(重文)の本堂で営まれた開白法要では、開帳した本尊を前に荒井浩忍住職(65)らが経を唱えた後、参拝客が「すごいね」「次はもう見られんかな」などと話ながら本堂を内覧した。
 本尊を初めて見たという西条市玉津の自営業の男性(50)は「めったに見られないので、ありがたい」とにっこり。寺総代長の桑村吉久さん(81)は「観音様は優しい顔をしている。修復後の美しい姿と合わせて、修復の終わった三重塔や仁王門なども多くの人に見てもらいたい」と話していた。
 興隆寺は642年に空鉢仙人が開山し、1375年に現在の本堂を再建。源頼朝の供養塔と伝わる重文の宝篋印塔(ほうきょういんとう)や、1286年に河内国(現在の大阪府)の鋳物師(いもじ)が造った重文の銅鐘などが残っている。