船を理不尽に襲う略奪者―。一般にはマイナスなイメージが強い中世の「海賊」の実態を紹介する特別展「村上海賊って悪者?」が、愛媛県今治市宮窪町宮窪の村上水軍博物館で開かれている。瀬戸内海での安全な航行を保障するため村上海賊が与えた旗「過所旗(かしょき)」などを通して、大名や商人に必要とされていた村上海賊の姿に迫っている。9月23日まで。
 能島村上氏は宮窪町沖の能島を本拠の一つとしたが、塩飽諸島(香川県)や秋穂(山口県)などにも活動拠点があった。村上氏は、長年にわたり築き上げた生活領域を通る船に、「関役(さきやく)」「津公事(つくじ)」と呼ばれる通行料を求めた。応じれば「過所旗」や、船の周りに張り巡らす「御幕(おんまく)」などを渡し、航海の安全を約束した。
 村上武吉が1581(天正9)年に紀州国(和歌山県)の商人に与えた過所旗は、縦約58センチ、幅43センチの絹製。「上」の文字が大きく書かれ、船上で掲げていたためか日焼けによる変色がある。