愛媛県立みなら特別支援学校(東温市見奈良)高等部の3年生61人が2日、地元の坊っちゃん劇場でオリジナルミュージカル「雨ニモ負ケズ―賢治誕生」を上演した。劇場の俳優らに指導を受け4月から取り組んできた成果を堂々と披露し、客席を埋め尽くした約450人から喝采を浴びた。
 ミュージカル制作は、県が新設した特別支援学校文化芸術支援事業の指定校となり実現。知的障害などのある生徒たちは、近藤誠二さん(44)ら同劇場アウトリーチ事業部の俳優のワークショップで表現や歌唱を磨いていった。作品は、生徒それぞれの個性が生きるよう近藤さんが台本と演出を担当。宮沢賢治が妹の死や自身の病気、天災などに見舞われながらも、投げやりにならず懸命に生きる様子を描いた。
 公演で生徒たちは和服など役の衣装に身を包み、スポットライトに照らされて生き生きと演技。終演後はロビーに並んで観客を見送り、ねぎらいの言葉に感極まり涙を流す姿も。宮沢賢治を演じた松田優政さん(18)は「初めはできるか不安だったが、近藤さんたちに教わってみんなで練習を重ねることで自信がついていった。気持ちが届くようにと思って舞台に立ち、お客さんに『感動した』と声を掛けてもらえてうれしい」と目を輝かせていた。
 生徒とハイタッチを交わした近藤さんは「みんな春には違う道に進むけど、つらいときや悲しいときにはこの経験を思い出して、もう一歩頑張ろうという気持ちになってください」とエールを送った。