松山の被爆男性証言 広島平和祈念館が映像収録 地球が爆発したかと/帰郷後に差別
広島、長崎両県以外で暮らす被爆者の証言を映像で記録している国立広島原爆死没者追悼平和祈念館は17日、愛媛県内で収録を始めた。初日は15歳のときに爆心地から約2キロ地点で被爆した小坂義雄さん(86)=松山市北斎院町=が体験を振り返り「戦争だけはしてはいけない」と訴えた。20日まで計6人に聞く。
被爆の実相を後世に伝えようと2003年度から始め、これまでに323人(県内6人)を収録。16年度は中四国地方の22人が対象で、完成した映像は18年度から同館やホームページで公開するほか、平和学習資料として貸し出す予定。
「地球が爆発したんじゃないかと思った」。海軍工廠(こうしょう)造船実験部に所属していた小坂さんは、自宅近くの集会所で8月6日の記憶を紡ぎ出した。カメラを前に身ぶり手ぶりを交え「川の土手に避難する人たちの顔はこんなに腫れ上がり、腕の皮膚はここまで垂れ下がっていた」と惨状を語った。
愛媛に帰郷すると体調を崩し「広島帰りには近づくなと言われ、10年近く寝て過ごすだけで話してくれる人もおらんかった」と証言。最後に「とにかく戦争だけはせられんのじゃないですか」と繰り返した。
小坂さんは証言の映像化に「みんなに見てもらえることは本当にありがたい」と話した。同居する孫の里奈さん(34)は「身近にいても現実味がないくらい恐ろしい体験だけど、忘れてはいけないこと。映像を通して若い人にも戦争について考えてほしい」と語った。