愛媛大「四国遍路・世界の巡礼研究センター」主催の公開講演会が29日、松山市文京町の同大で開かれた。大阪府立大の河合真澄教授が「歌舞伎の中の巡礼」と題し講演、演劇の巡礼と現実の巡礼との関係性を探った。
 講演会には市民や学生ら約100人が参加。江戸時代の演劇が専門分野である河合教授は、歌舞伎の脚本である「台帳」や、絵であらすじをたどる「絵づくし」などから複数の場面を取り上げ、フィクションの中に表れる巡礼を考察した。
 1762(宝暦12)年初演の「竹篦(しっぺい)太郎怪談記」で、高野山から八十八カ所を巡回する役人が数年ごとに来ていたことや、遍路でも女性の一人旅では簡単に宿に泊めてもらえなかった状況がうかがえるシーンを紹介した。
 別の場面では、夫の敵を捜す女性遍路が「四国辺路に事寄せ方々行方を尋ねたわいの(四国遍路にかこつけて、方々捜していたのだ)」と語っており、「芝居の中では、手段としての巡礼がよく描かれている」と解説した。
 河合教授は「四国遍路は巡礼の中でも特別な存在。当時は経験者が少なく、演劇を見る人も内容を知りたかった。そこで遍路の場面をつくり、観客の興味を引く意図もあった」とした。ノートルダム清心女子大の小嶋博巳教授と愛媛大の胡光教授との3者対談もあった。
 30日は午前9時半から、愛媛大で研究集会が開かれる。