愛媛県今治市の大三島出身で大三島の秋祭りをテーマにした作品を多く手掛ける村上佳苗さん(31)と、全国各地に伝わる神話などの物語をモチーフにする石原七生さん(34)の画家2人の企画展が、同市大三島町宮浦の大三島美術館で開かれている。
 企画展名「石原七生×村上佳苗 潮綯い合す処(うしおないあわすところ)」には、大三島を見つめてきた村上さんと、海を越えたまれびと(来訪者)である石原さんの感性が合わさるとの意味が込められている。作風やジャンルは違うものの、親和性がある2人の73点を楽しめる。
 村上さんは同市上浦町甘崎に生まれ育ち、多摩美術大(東京)の大学院修了後、同大で助手を務める。油画で大三島を主題に創作しており「人間くささなど良いことも悪いことも含めて島の本質を捉えたい」と土着の文化にこだわる。
 毎年帰省する秋祭りがテーマの作品は、写実ではなく五感で感じ、先達から聞いた話を基に独自に紡ぐ。
 新作の「阿礼一万人、安万侶千人(あれいちまんにん、やすまろせんにん)」は初の自画像。片膝を付いた自らの前で多くの人が意気揚々とする。「古くから続く秋祭りには常に記録者がおり、自分もその一人」との思いを込めたという。
 2016年の岡本太郎現代芸術賞で入選した「恐み恐みも白す(かしこみかしこみももうす)」、瀬戸地区の獅子をモチーフにした「鼻栗瀬戸」など25点を出品している。
 日本画の石原さんは、東京在住で神話や伝承などをモチーフに、現代で起こる事象や心象風景を取り込み表現する。
 「くさびら やまつみ わだつみ」は狂言「くさびら」を題材に女性の開放感などを表した縦約1.8メートル、横約9メートルの大作。服やテキスタイルといった自らの構成要素を反映した自画像、俵屋宗達に影響され描き続ける象など48点を展示する。
 石原さんは「作風は違うが共通点もあり、それを体感してほしい」、村上さんは「2人の作品を深く見て視点の違いを感じてほしい」と話している。
 企画展は12月3日まで。月曜休館。