1900年代初頭に県内で採集された植物の標本が、愛媛県西予市宇和町卯之町4丁目の宇和高校に多数保存されていることがこのほど分かった。同校が確認し生徒が目録作りを進めている。県総合科学博物館の小林真吾専門学芸員(植物地理学)は「現存するこの時代の県内の植物標本は非常に少ない。当時の植物の様相を推測できる貴重な資料だ」と話している。
 宇和高によると、標本は約2千点あり、うち少なくとも数百点は、ラベルから1902~10年代ごろ作られたとみられる。同市宇和町や大洲市の神南山、内子町五百木など県内のほか、北海道や山梨県、日光(栃木県)などで採集された。ミミカキグサ(東宇和郡)やイシモチソウ(松山市久万ノ台)など県レッドデータブックに記載されている植物も含まれている。
 08年の同校設立時(当時は東宇和郡立農蚕学校)から教壇に立ち3代校長も務めた末光績(いさお)や教諭の河内完治(こうち・かんじ)らが制作した。2人は札幌農学校(現・北海道大)で植物学を専攻した。
 以前から理科室の収納棚に標本があることは分かっていたが、宇和高の歴史を学ぶ総合学習の一環で年代や制作者を確認した。
 宇和高の「六十周年記念沿革誌」によると、農蚕学校設立時には標本室が設けられていた。小林専門学芸員は、当時は図鑑がなかったため、農業に害を及ぼす雑草などを見せる教材として使われたと考えられるとし「今は少なくなった植物の昔の様子や外来種がいつ愛媛に入ってきたかなど、整理が進めばさまざまな切り口の研究に活用できる」と話す。