「瓶ケ森ヒュッテ」西条市再整備へ 思い出の山小屋 長年お疲れさま
石鎚国定公園内の瓶ケ森(1897メートル)にある山小屋「瓶ケ森ヒュッテ」(木造2階建て、延べ床面積約700平方メートル)の再整備に愛媛県西条市が乗り出した。ヒュッテは、石鎚山系縦走や県内大学、高校の登山部の練習拠点として長年親しまれたが、数年前に営業を終了した。荒廃が進む中、所有者の市は、倒壊の恐れがある登山道に接した建物の一部を解体し、避難小屋とトイレを設置する計画。30日はボランティア約90人が取り壊しに備え懐かしい品々を運び出した。
市や山岳関係者によると、1953年の四国国体の山岳競技のため愛媛県営の宿泊所として設置。所有は県から県山岳連盟を経て、管理人の故・幾島照夫さんに移った。増築を繰り返し、200人が宿泊できるほど活気づいたが98年に幾島さんが死去。後を継いだ妻も高齢になるなどして2009年、市管理となった。今では床が抜けるなど傷みが激しく、市は本年度から協議を始めていた。
秋晴れの30日、参加者は瓶ケ森駐車場からの約800メートルをキャリーを背負って何度も往復。布団や何年漬け込んだか分からないまむし酒など2トントラック2台、軽トラ5台分を運び出し、ヘビの抜け殻がいくつも見つかる場面も。市は今後も作業を続け「なるべく早く小屋とトイレを設置したい」とする。
ヒュッテがホームグラウンドだったという西条高登山部OBの男性(71)=西条市=は「朝から晩まで幾島さんや先輩にしごかれた。懐かしい」と笑顔。ササに覆われ白骨林がある瓶ケ森から見る石鎚の雄姿は同山系の中でも優美とされ、約20年炊事の手伝いをした女性(74)=香川県観音寺市=は「炊事場から見える石鎚山は本当にきれいだった」と懐かしんだ。
幾島さんの三女(61)=西条市=は「父はササの保護など環境問題にも取り組んできた。その思いも継いでほしい」と話した。