がんの影響で一時声を失い、発声用の医療器具をのどに装着して歌い続けている愛媛県松山市出身の声楽家、筒井一二三さん(57)=東京=の「ふるさとコンサート~いのちの歌」が21日、松山市一番町3丁目の萬翠荘であった。苦難を乗り越えてよみがえった筒井さんの美しい歌声に、約110人が感動とともに聞き入った。
 筒井さんは今年2月に気管切開の手術後、医療用の補助器具を挿入して再び声が出るようになった。がんの治療をしながら、古里・松山でのコンサートを目標に練習に励んできた。
 コンサートでは、共演のピアニスト田中梢さんの演奏で「母」や「いのちの歌」などを心を込めて披露。「ふるさと」や「この街で」は、来場者も一緒に歌った。
 コンサートの企画運営に携わった、大学時代の同級生高曲雅子さん(57)=同市=は「精神的にも肉体的にも大変だったと思うが、本当によくやったね、と言いたい。気持ちの伝わるコンサートができて良かった」とたたえた。
 筒井さんは「古里でたくさんの方に励ましてもらい感謝。がんを克服して体調を元に戻し、次はもっと良い歌声を届けたい」と感無量の表情で語った。