「名取」同士の縁結びの松、すくすく育て―。東日本大震災で津波被害を受けた宮城県名取市の住民らが23日、歴史的にもつながりがある同じ地名の愛媛県伊方町名取地区を訪れた。津波に耐えたクロマツの子孫の苗木を植樹し、住民間での末永いお付き合いを誓った。
 佐田岬半島西部の海抜100~200メートルほどの急斜面にある伊方町名取地区。住民によると、地名の由来は江戸時代初期にさかのぼるとされる。1615年に宇和島藩の初代藩主伊達秀宗が入城する際、宇和海の警護のために定住した軍夫らが仙台藩の名取郷(現在の名取市)出身だったと言い伝えられている。震災直後には「先祖ゆかりの地を応援したい」と地区独自で義援金を送った。
 今回の訪問のきっかけとなったのは、2015年7月に地区を訪れた名取市の大橋信彦さん(72)と住民の懇談会。「地区の皆さんが名取市を『本家』と呼ぶ様子に、強い思いを感じた」とし、9月には伊方への訪問団派遣を計画。年末に「二つの名取を結ぶ会」を設立し、産品を贈り合うなどしてきた。
 23日は、会のメンバーら16人が訪問。津波を生き延びた閖上(ゆりあげ)地区のクロマツの子孫の苗木10本を住民と小学校跡地などに植え友好関係の発展を願った。住民からは「おたくらが来なはったから私らが生まれてきたのよなあ」と歓迎の声が上がり、夜には地区の約30人がかんきつや海の幸を振る舞い、「夢みたい」と交流を図った。