「ずっと前から候補に挙がり、いつか受賞すると思っていた。うれしくてほっとした」。大隅良典・東京工業大栄誉教授(71)がノーベル医学生理学賞に決まったことを受け、基礎生物学研究所(愛知県)で6年間研究を共にし、現在も共同研究を続ける愛媛大農学部の関藤孝之准教授(48)=分子生物学=は「酵母を使う基礎研究での受賞で励みになる」と感慨深げに語った。
 2人の出会いは2000年夏ごろ。米国留学していた関藤さんは、細胞が自分のタンパク質を分解してリサイクルする「オートファジー(自食作用)」に関心を持ち、基礎生物学研究所の大隅さんに「ぜひオートファジーの研究をさせてほしい」と直接頼んだ。会ってみると、ソフトで淡々とした語り口から研究の面白さが伝わってくる。「どうしても研究したい」との思いが強まった。大隅さんは実績も面識もない若手を快く受け入れてくれ、01年から6年間研究を共にした。
 研究室での大隅さんは型にはめず、自由にやらせてくれた。一方で、要所では鍵になる重要なコメントをくれ、コミュニケーションも大切にしていた。大好きなお酒を飲みながら語る科学の話は非常に面白く、「指導という形でああしろ、こうしろと言わない先生だったが、研究で苦労しているところはよく見てくれていた」と振り返る。
 ノーベル賞決定後、基礎研究の大切さを強調する大隅さんの姿に、関藤さんは「当時から目先の成果にとらわれず、腰を据えて基本的な疑問に答える基礎研究の大切さを常々説いていた。受賞で基礎研究の面白さへの関心が高まり、こういう視点もあると学生にも理解してもらえれば」と語っている。