今年から来年へ続く文豪夏目漱石の「記念年」のスタートを祝う全国式典が14日夕、熊本市内のホテルで開かれた。漱石は1896(明治29)年愛媛県尋常中学校から熊本・第五高等学校に転任し、4年3カ月暮らした。熊本地震で開催の可否が検討されたが、規模を縮小し地元のほか、松山や東京、和歌山などから計約400人が参加した。
 地震から1カ月を迎え、参加者全員で黙とうし、蒲島郁夫・熊本県知事は「県外の漱石ゆかりの地からも参加してもらい、熊本の再生は間違いないと確信した」とあいさつした。
 姜尚中・東京大名誉教授(熊本市出身)が「漱石の死生観―熊本大震災を生きる」をテーマに基調講演。小説「虞美人草」や「草枕」を引用しながら、「漱石は作品中『憐(あわ)れ』という言葉を多用している。肩を寄せ合い、支え合い、生きるということ」と解説し、漱石自身の生き方を示す句として97年の「木瓜咲くや漱石拙を守るべく」を紹介した。