これからも心は福島とともに―。闘病しながら命の大切さを訴える詩を作り続け、東京電力福島第1原発事故で故郷の福島県双葉町を離れたままこの世を去った元教員と、福島のアマチュアカメラマンのコラボ作品展が28日まで、愛媛県鬼北町近永のギャラリーなんでも館で開かれている。東日本大震災後、鬼北町民の笑顔の写真を贈ったカメラ店の母子が福島を思い企画した。
 詩を作ったのは悪性リンパ腫の闘病中に被災し2014年11月に死去した元中学校教頭の三本杉祐輝さん(享年56)。亡くなる間際まで講演やブログなどで思いを発信し続けた。友人の矢口洋子さん(72)=福島市=が、自身が撮影した写真に、三本杉さんの詩を織り交ぜた作品集「綿毛にのって」を2月に出版。鬼北町でのコラボ作品展は本から37点を厳選した。
 「昨日の嫌なことは ひきずらず 毎日が新たな朝 昨日はだめでも 今日 今から勝負」。前へ向くことを後押しする三本杉さんの言葉が、海水浴を楽しむ子どもの姿や四季折々の花々など福島の今を捉えた写真に添えられている。
 鬼北町との縁は12年、同町近永でカメラ店を営んでいた加賀城孝さん(享年55)が、被災者を元気づけようと町民らの笑顔で手をつなぐポーズを撮り始めたことがきっかけ。事故で孝さんは帰らぬ人となったが、妻嗣子さん(56)と長女瞳さん(25)が引き継ぎ14年春に福島市内で約2100人の写真を展示した。その際、知り合った矢口さんが三本杉さんを含む約3000人の笑顔の写真を撮るなど交流を深めている。