2012年7月に愛媛県西条市中奥の増水した加茂川で、西条聖マリア幼稚園(同市大町)のお泊まり保育中に園の男児(5)が流されて死亡し、園児2人がけがをした事故で、安全注意義務を怠り3人を死傷させたとして業務上過失致死傷罪に問われた同市の元園長(75)ら園関係者3人の判決公判が30日、松山地裁であり、日野浩一郎裁判長は元園長の被告に罰金50万円(求刑罰金100万円)を、新居浜市の元主任教諭(47)=求刑罰金50万円=と、同保育を計画立案した西条市の教諭(46)=同、休職中=の2人に無罪を言い渡した。
 日野裁判長は、河川上流の降雨で増水が起こることは一般的にある程度知られていると指摘。事故当日は県内に雷注意報が発令され、上流の降雨をインターネットで確認でき、増水によって遊泳能力の未熟な園児に重大な危険が及ぶ可能性を予見できたのに、園長は天候確認やライフジャケット装着などの水難事故を防ぐ計画や準備を整える注意義務を怠ったと認定した。
 遊泳場所が晴れていたことから安易に増水の危険がないと判断したことを「園長として安易で非難されるべきだ」とした一方、安全確保には園外活動のガイドラインや事故事例の情報を利用できる仕組みづくりなどの安全対策が必要とし「必ずしも教諭個人に対する厳しい刑罰が効果的とは言えない」と量刑理由を述べた。
 元主任教諭と教諭を無罪とした理由は、実質的にお泊まり保育や遊泳中止を決定してきたのは園長で、安全配慮義務の職務や権限を持っていなかったと説明した。